みんなde読書

慶河堂の読書感想ブログプロジェクト【みんなde読書】のサイトです。

2020-01-01から1年間の記事一覧

『きらめく共和国』アンドレス・バルバ/訳:宇野和美

きらめく共和国作者:アンドレス・バルバ発売日: 2020/11/11メディア: Kindle版 たのしそうな印象のタイトルとカラフルでかわいらしい表紙の絵から、YA小説だと思って手に取った。「奇妙な子どもたちは、盗み、襲い、そして32人が、一斉に死んだ。」という帯…

『つくられた心 Artificial soul』佐藤まどか

つくられた心 (teens’best selection)作者:まどか, 佐藤発売日: 2019/02/15メディア: 単行本 イタリア語の翻訳も多く手がけている、イタリア在住の作家 佐藤まどかさんのYA(ヤングアダルト)小説。 政府の理想教育としてある学校のクラスに1人、どこからど…

「普通」という名の空虚な理想についてー『元女子高生、パパになる』杉山文野

元女子高生、パパになる (文春e-book)作者:杉山 文野発売日: 2020/11/11メディア: Kindle版取材したあとも、それだけで終わるのではなく、その後どうなさっているか気になる人がいる。 私にとってはこの方がそうだった。 杉山文野さん。 フェンシングの元日…

『帰れない山』パオロ・コニェッティ

帰れない山 (新潮クレスト・ブックス)作者:コニェッティ,パオロ発売日: 2018/10/31メディア: 単行本 ミラノに住むピエトロは、山好きの両親の下に生まれ、毎年夏になるとグラーナ村で休暇を過ごす。そこで山暮らしの同じ歳のブルーノと仲良くなる。 一人は都…

『山のパンセ』串田孫一

新選 山のパンセ (岩波文庫)作者:串田 孫一発売日: 1995/06/16メディア: 文庫皆さんは移住を考えたことってありますか? ささげ豆は奈良に住んでかれこれ8年になります。大好きな奈良なんですが、8年の間で一度だけ離島に移住を試みたことがあります。瀬戸内…

『キャンバス』サンティアゴ・パハーレス

『キャンバス』サンティアゴ・パハーレス/訳:木村榮一キャンバス作者:サンティアーゴ ・パハーレス発売日: 2011/12/20メディア: 単行本 木村榮一さんの翻訳とあとがきや解説がすごく好きで、翻訳者さんで読む本を選んでいたときに出会ったこの本『キャンバ…

「ある風来猫の短い生涯について」藤原新也

今日ささげ豆が紹介する作品は、文庫版『動物のお医者さん』6巻。しかも、動物のお医者さんではなく、文庫の最後の解説、「ある風来猫の短い生涯について」です。これは作家の藤原新也さんによる短いエッセーです。 この本文との馴れ初めは、大学入試問題で…

文学とYouTubeー三味線ひょっとこ/ささげ豆さんー

【みんなde読書】の執筆者紹介です。店を開いて早いもので半年が過ぎました。何度か来てくださる人も増え、常連さんと呼ばせてもらいたい方もちらほらとおられ、その中でも慶河堂に足を運んでくださるのが「ささげ豆」さんです。 「三味線ひょっとこ」という…

『丁寧な暮らしをする餓鬼』塵芥居士

今回登場してくださるのは、ささげ豆さんです。ささげ豆さんは慶河堂の常連さん。 いつも楽しく本の話をしにきてくださいます。YouTuberでもあります。 ささげ豆さんのご紹介はとあるコミックエッセイです。丁寧な暮らしをする餓鬼 (コミックエッセイ)作者:…

あなたは(わたしは)ひとりではない——『彼女たちの部屋』レティシア・コロンバニ

彼女たちの部屋作者:レティシア コロンバニ発売日: 2020/06/18メディア: 単行本作者のレティシア・コロンバニはフランス・パリ生まれの映画監督・脚本も手がける小説家である。映画監督として制作した『愛してる、愛してない…』は日本でも公開された。2017年…

先生と居れば春——『漱石先生』寺田寅彦

漱石先生 (中公文庫)作者:寺田 寅彦発売日: 2020/07/22メディア: 文庫寺田寅彦は明治から昭和初期にかけて生きた物理学者であり、多くの随筆を残している。また俳人としても知られる。「災害は忘れた頃にやってくる」という言葉を残した人だと言われている。…

『ペンギンの憂鬱』アンドレイ・クルコフ

ペンギンの憂鬱 (新潮クレスト・ブックス)作者:アンドレイ・クルコフ発売日: 2004/09/29メディア: ペーパーバック アンドレイ・クルコフはウクライナの作家である。言語はロシア語。 《夜のキッチン。真っ暗だ。ただの停電だろう。暗闇の中でペンギンのミー…

ぼくが、きみを、しってる——おかざき真里『阿・吽』11巻

阿・吽 (11) (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)作者:おかざき 真里発売日: 2020/03/12メディア: コミックオススメがマンガなのが店長の偏った趣味を類推させますが、このマンガは普段あまりマンガを読まない人にも是非ともオススメしたいマンガ。特に歴史や宗教…

ここにはもう、きみがいない——野村克也『ありがとうを言えなくて』

ありがとうを言えなくて作者:野村 克也発売日: 2019/03/29メディア: 単行本これは2020年2月11日にお亡くなりになった野村克也さん(以後ノムさん)が、妻野村沙知代さん(以後サッチ—)の死について書いたエッセイである。ノムさんは『野村ノート』をはじめ…

『カモメに飛ぶことを教えた猫』ルイス・セプルペダ

カモメに飛ぶことを教えた猫(改版) (白水Uブックス)作者:ルイス・セプルベダ発売日: 2019/03/27メディア: 新書 私は、この本にはとても思い入れがある。初めてこの小説に出合ったのは10年以上も前、イタリア語版だった。一緒に勉強していた友人が旅行に行…

文豪の青春の記録——和田茂樹編『漱石・子規往復書簡集』

漱石・子規往復書簡集 (岩波文庫)発売日: 2002/10/16メディア: 文庫明治の文豪夏目漱石と俳句や和歌で名を残した正岡子規。それぞれ非常に有名で人気のある作家であるが、この2人が同窓生であり、とても仲のいい友人同士だったということを知っている人はそ…

突き刺さってきた他者——柳原孝敦『テクストとしての都市 メキシコDF』

テクストとしての都市 メキシコDF作者:柳原孝敦発売日: 2019/11/11メディア: 単行本長らく、メキシコ・シティはD.F.(デー・エフェ「メキシコ連邦首府」の略)と呼ばれていた。2016年にメキシコ・シティが首都の正式名称とされ、現在では虹色のカラフルな…

永遠に美しいもの——松岡環『レスリー・チャンの香港』

レスリー・チャンの香港作者:松岡 環発売日: 2008/03/01メディア: 単行本4月1日。今年はさすがにコロナ禍のせいで浮かれている人はあまりいないが、毎年エイプリルフールを楽しむ人が増える。最近はSNSが発達したので、プロモーションの一環でもあるのだろう…

誰にも等しく訪れるもの——長谷敏司『あなたのための物語』

あなたのための物語 (ハヤカワ文庫JA)作者:長谷 敏司発売日: 2011/06/10メディア: 文庫西暦2083年、人工神経制御言語ITPの開発者であるサマンサ・ウォーカーは、仮想人格《wanna be》(なりたい)に小説を執筆させ、「かれ」の想像力を育てようとする。日々…

メネナ・コティン『くろはおうさま』

くろは おうさま作者:メネナ・コティン発売日: 2019/11/16メディア: 単行本「トマスが いっていたよ。きいろは からし。ぴりりと からいけど、ヒヨコの はねみたいに ふわふわ」「あかは イチゴみたいに すっぱくて、スイカみたいに あまい。だけど すりむい…

Satomi Ichikawa "¿Helado de papas?"

Helado de papas?/ Ice Cream of potatoes?作者:Ichikawa, Satomi発売日: 2009/10/01メディア: ペーパーバックたくさんのアルパカと暮らすルチョは、毎朝パパと飼い犬のチャスキと一緒にアルパカたちに草を食べさせに山に出かけていきます。山の暮らしは電気…

女という軛から放たれて——秦和生『カイニスの金の鳥』

カイニスの金の鳥 1作者:秦 和生発売日: 2019/09/15メディア: コミックカイニスの金の鳥(2)作者:秦 和生発売日: 2020/02/16メディア: コミック19世紀初頭、ヴィクトリア朝以前のイギリス。地方の中産階級の家に産まれ育った少女リア・ボイドは小説家になる夢…

アントニオ・スカルメタ『ペドロの作文』

ペドロの作文作者:アントニオ スカルメタメディア: 大型本チリの軍事独裁政権という、日本の子供たちにとってはなかなか理解が難しいテーマの絵本なのですが、主人公のペドロもそれがどういうことなのかわかっていません。 ペドロの両親は、夜になるとラジオ…

この本で世界を変える——ラーラ・プレスコット『あの本は読まれているか』

あの本は読まれているか作者:ラーラ・プレスコット発売日: 2020/04/21メディア: 単行本革命に揺れるソ連で医師で詩人であるジバゴの愛と波乱の生涯をかいた名作『ドクトル・ジバゴ』。この1冊の小説の発行をめぐって、アメリカとソ連の「冷たい戦争」がくり…

絵本と異文化との出会い—Barchetta Barquito/mArさん—

【みんなde読書】の執筆者紹介です。カナリア諸島、Lanzarote島の展望台からの風景2月22日に店を開いたあと、口コミとTwitterでのほそぼそとした宣伝にも関わらず、本に関わる活動をなさっている方々が何名か来てくださいました。その中でもかなりはじめのこ…

物書きのサガに惹かれてー慶河堂/慶ー

【みんなde読書】の執筆者紹介です。メキシコの郷土料理、アステカスープこんにちは。はじめまして。 慶河堂店主の慶と申します。コロナ禍を受けてはじめました【みんなde読書】ですが、mArさんにまず参加してくださいまして、スタートしました。ぼちぼちと…

【みんなde読書】はじめに

はじめまして。慶河堂店主の慶と申します。 このページは慶河堂主催プロジェクト【みんなde読書】のブログです。 言葉通り、「みんなでオススメ書籍の読書感想を書いていこう」というプロジェクトです。このブログを始めたいと思ったのは、やはりコロナ禍で…

総合目次

【ご挨拶】 はじめまして。ならまちの隅っこにある古本主体本屋【慶河堂】店長の慶と申します。こちらは、慶河堂が主宰いたします、複数の執筆者による本の感想・オススメブログです。 注:このサイトは特定の出版社・著作権者の方々とは一切関係ありません…